研究課題/領域番号 |
16659394
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉川 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (50230701)
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研究分担者 |
中瀬 裕之 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10217739)
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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キーワード | 脳出血 / ラットモデル / ES細胞 / 神経幹細胞 / 細胞移植 / コラゲナーゼ / 脳室内投与 / レチノイン酸 |
研究概要 |
分化全能性を有するES細胞は、in vitroにおいて神経系細胞に分化誘導させることが可能で、神経疾患の細胞移植治療の細胞源として有望である。本研究では、有効な治療手段に乏しい脳出血後の機能回復に、ES細胞の移植療法が有用であるかを検討した。 本年度は、ラット片側大脳半球(線状体)に定位的にコラゲナーゼ液を注入して脳出血ラットモデルを作成し、この脳出血モデルラットの脳室内に、GFP標識したES細胞より分化誘導した神経幹細胞(ES-NSCs)を移植した。ES-NSCsの誘導には、胚様体形成およびレチノイン酸処理を用い、高率にネスチン陽性細胞(ES-NSCs)からなる細胞集団を得、これをコラゲナーゼ注入後7日目に健常側(非血腫側)脳室内投与した。コラゲナーゼ液注入により出血性病変が惹起され、4週間後には空洞形成および周辺グリオーシスが観察された。薬剤誘導による行動学的観察は施行していないが、無処置観察下ではコラゲナーゼ注入後も永続的行動異常は観察されなかった。一方、組織学観察では、血腫腔近傍および周辺脳におけるGFP陽性細胞の存在とそれらの神経細胞およびアストログリアへの分化を組織化学的に証明し得た。 本研究成果は、ヒト脳出血においても、将来のES細胞を用いた神経幹細胞を脳脊髄腔内へ投与することで、血腫腔近傍にES由来神経細胞を新しく生着させうる可能性を示している。本ラット脳出血モデルでは行動学的異常の招来が無いため、その改善が観察されなかったが、ヒト脳出血においては欠損機能の回復・改善に寄与できる可能性があると期待する。なお、本成果は、Neurol Res.26:265-72.2004に発表した。
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