研究概要 |
ES細胞は、in vitroにおいて神経系細胞に分化誘導させることが可能で、神経疾患の細胞移植治療の細胞源としで有望である。本研究では、ラット片側大脳半球(線状体)に定位的にコラゲナーゼ液を注入して脳出血ラットを作成した。コラゲナーゼ注入後7日目に、この脳出血ラットの健常側脳室内に、GFP標識したES細胞より分化誘導した神経幹細胞(ES-NSCs)を移植した。移植後4週間後の脳組織を観察したところ、血腫腔近傍および周辺脳におけるGFP陽性細胞の存在を認め、それらは神経細胞およびアストログリアへと分化していることが免疫組織化学的に証明できた。さらに、興味深いことにGFPおよびnestinに陽性を示すES-NSCsと考えられる細胞塊の付着を脳室壁に認めた。一方、脳室の上衣細胞層直下には、多層化して増殖する細胞集団の出現が観察され、内在性の活発な分裂を示す神経幹細胞と推測された。血腫腔近傍に出現するES由来神経およびグリア細胞が壁在ES-NSCsのmigrationによるものかどうかについては結論を導き得なかった。 本研究成績は、ES細胞を用いた神経幹細胞を脳脊髄腔内へ投与することで、血腫腔近傍にES由来神経細胞を新しく生着させうる可能性を示している。また、その証明はなし得なかったが、本研究で発見された脳室壁に付着する外来性NS-ESC細胞塊と上衣層下の内在性分裂細胞は類似領域に存在し、外来性および内在性神経幹細胞の挙動の類似性を想定させた。 これらの成績は、Neurol Res.26:265-72,2004(2004年発行)およびNeurotrauma Research 16:49-51,2004(2005年発行)に発表した。
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