研究課題
平成16年度報告書損傷脊髄環境の制御今年度は、移植細胞となる胎児海馬由来神経幹細胞と骨髄由来幹細胞についてin vitroおよびin vivoの評価を行った。1)移植細胞としての胎児海馬由来神経幹細胞(神経幹細胞)と骨髄由来幹細胞(骨髄細胞)の共培養を行いそれぞれの形態変化および遺伝子発現を検討した。2)移植した骨髄細胞の正常脊髄内での分布・分化について組織学的評価を行った。1)神経幹細胞は、ラット胎児海馬から単離分散し、骨髄細胞は、成ラット大腿骨から単離培養し、それぞれ2-3代継代し、幹細胞を培養皿上にまき、共培養用のメッシュ上に骨髄細胞を培養した。その結果、骨髄細胞と共培養していない群と比較すると神経幹細胞の多くがアストロサイトに分化していることがわかった。さらにRT-PCR法を用いて骨髄細胞の神経栄養因子の発現を比較するとニューロン維持に必要なNT3やBDNFの発現が欠けていた。2)生後7日ラット正常脊髄内に骨髄由来幹細胞を移植し、細胞生着・分布を検討した。移植細胞はGFP導入アデノウイルスで標識した。移植1週で灌流固定し、免疫染色によって移植細胞の分布形態を検討した。生着細胞数は、1切片あたり平均10個ほどであり、注入部白質に分布し生着不良であった。いずれの細胞も神経系細胞へ分化を認めなかった。神経幹細胞移植時には、平均約400個の細胞が生着しており生着率の低さが際立った。さらに幼若脊髄内という生着しやすい環境にありながら、移植細胞の生存は不十分である。文献的には、脊髄損傷モデルに対する骨髄細胞移植が機能改善に有効であり、骨髄細胞が有効な細胞種であることが知られている。今年度のin vitroの結果から骨髄細胞は、グリア細胞への作用が強く働いている可能性が示唆され、in vivo実験からは、組織学的に骨髄細胞単独では不十分であり神経幹細胞との組み合わせも有効な手段であることが示唆された。今後、脊髄環境制御についてさらにin vivo実験を進めていく予定である。
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