研究概要 |
本研究は従来のX線源(Thermionic emission type)とミニチュアX線源のもととなるField-emission typeとを用いX線を腫瘍細胞に照射し、照射後の腫瘍細胞の反応を分子生物学的に解析、比較検討しミニチュアX線源の抗腫瘍効果が従来のものと同等以上であることを証明することにより、ミニチュアX線源を使った新しい放射線治療(生体腔内照射など)の開発の意義を確立することを目的とする。当初、従来使われているX線照射装置(TE型)とミニチュアX線源を使って細胞の照射後の変化を調べる予定であったが、分子生物学的に解析をするにあたり試料となる細胞の量をある程度得るために、それなりの大きさのディッシュで照射をする必要があり、したがってミニチュアX線源ではなくある程度の大きさのX線源(もちろんFE型ではある)を使用する事になった。放医研から3SB細胞というマウスの胸線のリンパ腫の細胞を分譲して頂き、これで照射実験を開始した。 1.FE型でもTE型同様照射後にDNAのDSBが生じることをH2AXのリン酸化で確認した。 2.TUNEL染色による解析ではアポトーシスの定量は困難な点があったがTE型、FE型のいずれのX線管でもX線照射によってアポトーシスが誘導されて細胞が死に至る。両者に違いはみられなかった。 3.フローサイトメトリーによる細胞周期の解析ではX線照射によって3SB細胞ではG1-arrestがおこらずG2/M-arrestが確認された。また細胞周期の進行はアポトーシスとあまり関係なかった。両者に違いはみられなかった。 4.ウエスタンブロッティングによる蛋白の発現状況の解析では P53,P21,Chk1,Chk2いずれも照射によって反応を示したが両者に違いはみられなかった。以上からFE型の生物学的効果はTE型と同等であることが分かった。
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