研究概要 |
中枢神経機能に与えるgamma knifeの影響は、間接的に測定されているものの細胞レベルでの解析は行われていない。今回は、神経損傷回復過程に関与する分子の発現レベルがgamma knife照射後にどのような変化が生じるのか、その影響を線条体において解析を行った。線条体を今回選択した理由は、ラットの線条体のサイズが現在の最小gamma knife照射4mmのコリメータに一致するためである。さらに、小実験動物への照射を正確に行うためのMRI計測可能な特殊なフレームの使用条件を確定した。 線条体に150Gy照射すると4週間目にはっきりした組織の破壊像が観察されるが、3週目まではマクロの組織像は正常である。しかし、2週目頃より昼間の行動量の増強などの行動上の変化が出現してくる。この時期の線条体のマイクロアレー解析を行い、左右のmRNAの発現量を比較した。発現量に変化を見たのは神経伝達物質の受容体では、ドパミンD2(Drd2),アデノシンA2α(Adora2a),opiateκ1(Oprk1),5-HT 2C(Htr2c), glutamate dehydro-genase 1などに照射側の増加を認め、グリシン(Glrb)、bennzodiazepam (Bzrp)受容体は照射側での減少を認めた。ミエリンのupregulationを示唆するMyelin basic protein (Mbp), Pro-teolipid protein (Plp), Myelin associated oligodendrocytic protein (Mobp)の発現量増加が見られた。この時点では神経アポトーシスに関与する因子、Neurotrophic factors, Nogo, Neurexin等には変化がみられなかった。来年度は、さらに低線量照射時の影響を同様の手法にて測定し、gamma knifeの機能的効果について解析を行う予定である。
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