研究概要 |
平成16年度は脊髄スライス標本を用いて正常動物とカプサイシン塗布モデル動物の比較を行った。ラットの後足に0.075%カプサイシンを1日4回、4週間塗布して作成したカプサイシン長期塗布ラットと正常動物から脊髄を取り出して後根付き脊髄スライス(L4またはL5レベル)、脊髄後角第2層細胞からin vitroホールセルパッチクランプ記録を行った。後根刺激は吸引電極によって行った。刺激強度によって後根のAβ,Aδ,C線維の刺激を行い、それぞれの刺激強度で後角細胞に誘発される反応に関してカプサイシンラットと正常ラットを比較した。 後根Aβ線維の刺激を行うと、カプサイシンラット及び正常ラットでは約10%の細胞でAβ線維を介する他シナプス性EPSC(興奮性シナプス後電流)が検出され、両者にほとんど違いは認められなかった。Aδ線維刺激を行うと、正常ラットでは約80%の細胞でAδ線維を介するEPSCが記録され、その内の約半数は単シナプス性のEPSCであった。カプサイシンラットでもAδ線維刺激を行うと約80%の細胞でAδ線維を介するEPSCが記録された。しかし、単シナプス性のEPSCは非常に少なく(10%以下)、ほとんどが他シナプス性のEPSCであった。また、正常ラットでは約50%の細胞でC線維を介する単シナプス性または多シナプス性のEPSCが記録されたが、カプサイシンラットではC線維によるEPSCはほとんど検出されなかった(3%以下)。 以上の結果から、カプサイシン長期塗布により、Aδ線維及び無髄C線維に何らかの変性あるいは可塑的変化が生じている可能性があることがわかった。この現象がカプサイシンの鎮痛作用に関与してる可能性がある。
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