研究概要 |
前年度では、イソフルラン麻酔下での視床下部での一酸化窒素(NO)の推移とその反応物であるperoxynitriteの推移を観察したが、シリコンコーティングが不十分だったせいもあり視床下部梗塞が完全ではなかった。そこで、今回は、ナイロン糸のシリコンでのコーティングの長さを12mmとし、麻酔はイソフルランとセボフルランで同様の研究を行った。視床下部梗塞は体温の上昇を目安とした。あらかじめ、5〜7日前に視床下部(Bregma -3.0mm,外側1.5mm,深さ6.2mm : Paxinos & Watsonのラット脳地図)にマイクロダイアリシス用ダミーカニューレを挿入し、両側脳波測定のためのスクリューを設置した。当日、同じ麻酔下でマイクロダイアリシスプローブ(長さ8.0mm,膜長2mm)を挿入し覚醒させた。2時間のコントロールを測定し脳波とマイクロダイアリシスプローベを1.0μl/minで灌流した。正常時の脳波は活性化脳波を示し、NOに関しては、NO_2(retention time 5分)とNO_3(retention time 8分)の2つのピークがみられ、NO_3の濃度の方が、NO_2よりも高かった。その後、イソフルランまたはセボフルラン麻酔下で左総頸動脈、外頚動脈を露出し、外頚動脈およびpterygopalatine動脈を結紮後、総頸動脈からシリコンコーティングしたナイロン糸を抵抗のある部位まで挿入し2時間留置した。脳波は梗塞側で徐波化し、NO_2およびNO_3の濃度は徐々に減少した。2時間後再びセボフルラン麻酔下でシリコンコーティングナイロン糸を抜去した。その後、6時間NO_2およびNO_3の変化を観察したが、視床下部でのNOの増加は、イソフルラン麻酔下と同様な変化で次第にその総和は減少した。しかし、1日〜3日目になると、視床下部でのNO_2、NO_3の濃度は増加し、NO_2濃度はNO_3よりも大きかった。脳波は、常に梗塞側で徐波化しており、健常側では活性化脳波が見られた。Nitrotyrosineの発現は、40μm凍結切片で観察したが、3〜7日目で発現したが視床下部周辺部では観察されなかった。以上の結果より、麻酔によりそのNOの発現に差は殆ど見られなかったが、脳梗塞後の視床下部障害にNOが早期(時間単位)で関与することは少ないと考えられた。
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