研究課題/領域番号 |
16659423
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竹内 護 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (60284113)
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研究分担者 |
森田 潔 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40108171)
高橋 徹 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (40252952)
中塚 秀輝 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70263580)
岩崎 達雄 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (60379766)
梶谷 文彦 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70029114)
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キーワード | 肺微小循環 / 呼気終末陽圧 / 一回喚起量 / 血管径 / 血流速度 / 肺高血圧症 / 肺血管抵抗 / 血管拡張 |
研究概要 |
肺微小循環動態をダイナミックに観察するため、開胸ラットに対しペンシルレンズ型生体顕微鏡を用い、肺細動静脈および肺毛細血管網の血流動態を観察し、呼気終末陽圧(PEEP)の負荷や一回喚起量(TV)の血管径、血流速度分布、肺胞の動態に及ぼす影響を解析した。その結果PEEPの負荷やTVの増大は肺胞径の増大と藍微小循環系の圧迫をもたらし、その結果として肺細動脈の血流速度が著明に低下することを初めて実時間で解析することに成功した。 この結果をふまえ、最終的には肺移植でしか救命しえない原発性肺高血圧症(PPH)のさらなる病態の解明、新たな治療法の確立や、手術・病態時での至適呼吸・循環管理の確立をめざし、Monocrotaline(MCT)投与により肺高血圧を惹起させたモデルラットにおける肺微小循環の観察を行った。観察の結果、肺高血圧症モデルラットの肺細動脈は、臨床でしばしば観察されるのと同様に著しく蛇行し、形態学的には、その内皮表面は粗で不整であることを明らかにした。またメタクリレートレジンを用いた鋳型標本の走査型電子顕微鏡による観察やHE染色を行った組織標本の光学顕微鏡による観察によっても同様の変化が確認され、定量的な比較が可能となった。この内腔の狭小化や血管の蛇行と言った形態学的変化は血管抵抗の増大をもたらし、結果肺動脈圧の上昇を惹起していると考えられた。 一方、肺高血圧症に対する治療効果の確認のため、肺高血圧モデルラットに血管内皮依存性、及び非依存性の血管拡張薬(それぞれアセチルコリン、ニトロプルシッド)を投与し、肺細動脈の血管径の変化を同様に実時間計測した。その結果肺高血圧モデルラットが高度な肺高血圧を呈するMCT投与3週後では、血管内皮非依存性の血管拡張能はよく維持されているが、血管内皮依存性の血管拡張能は大きく傷害されていることが観察できた。これらのことから肺高血圧症では、肺微小血管の形態学的な変化と共に、血管内皮依存性の血管拡張反応の障害が主要な病態メカニズムであることが示唆された。 今後は一酸化窒素など従来の治療薬の効果をダイナミックに観察し、生体防御作用のあるヒートショックプロテインの誘導や抗酸化作用を持つ薬剤による肺高血圧症の発症予防あるいは治療効果についても検証していく予定である。
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