研究課題/領域番号 |
16659429
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
重松 昭生 産業医科大学, 医学部, 副学長 (30037428)
|
研究分担者 |
南 浩一郎 産業医科大学, 医学部, 講師 (70279347)
堀下 貴文 産業医科大学, 医学部, 助手 (40369070)
上園 保仁 長崎大学, 医学部, 助教授 (20213340)
佐多 竹良 産業医科大学, 医学部, 教授 (60128030)
白石 宗大 産業医科大学, 医学部, 助手 (40389458)
|
キーワード | 麻酔薬 / 動脈平滑筋 / 静脈性麻酔ケタミン / 細胞内cAMP / ^3H-thymidine / 細胞内リン酸化酵素 / 動脈硬化 |
研究概要 |
麻酔薬は手術に広く使用されているにもかかわらず、現在まで麻酔薬の動脈平滑筋の増殖に与える影響については良く知られていない。現在までに申請者らは血管平滑筋と似た性質を持つラット腎メサンギウム細胞を用いた研究において、静脈性麻酔薬ケタミンは細胞内cAMPの上昇を介して細胞増殖を抑制するという麻酔薬の新たな作用を見いだした。この麻酔薬の細胞増殖抑制作用は血管平滑筋増殖にも大きな影響を及ぼしているだろうと考えられるが、短期的、長期的にも血管平滑筋への作用を検討した報告はない。そこで今回申請者らは麻酔薬の細胞増殖抑制作用を動脈硬化の予防に効果があるのではないかということを思いついた。 本年度は血管平滑筋細胞の増殖機能にどのように麻酔薬が作用するか検討する目的で、培養ヒト冠動脈、大動脈平滑筋細胞を用いて、臨床で麻酔や疼痛管理に広く使用されているケタミンなどの静脈性麻酔薬が培養ヒト大動脈平滑筋細胞の増殖にどのように作用するかを[^3H]-thymidineの取り込みおよび細胞数の増加を測定することにより解析した。その結果ケタミンは有意に[^3H]-thymidineの取り込みおよび細胞数の増加を抑制した。これらの反応の機序を探る上で各種細胞内燐酸化酵素の阻害薬存在下で麻酔薬がどのように培養ヒト動脈平滑筋細胞の増殖に作用するかを検討し、これらの反応にPKCが関与していることが明らかとなった。さらに、ラットを用いて大動脈にカテーテルを挿入し、血管障害性動脈硬化を作り、麻酔薬の短期間投与が血管平滑筋の増殖に影響しているのかを確認したが、病理学的にも動脈硬化を抑制していることがあきらかとなった。 今後はまた、先天的に動脈硬化を容易に起こす動脈硬化モデルマウスを用いて、長期間経口により投与し、病理学的に麻酔薬の持続低量投与が細胞増殖を抑えて動脈硬化を予防しえるか検討する。最後に種々の臓器由来の培養ガン細胞に対しても増殖抑制作用があるのかもスクリーニングする。
|