研究概要 |
白血病に対する骨髄移植で、Graft-versus-leukemia効果(GVL効果)が注目され、固形腫瘍に対しても同様の免疫反応が期待されることから、より広範に移植片対腫瘍効果(Graft-versus-tumor効果:GVT効果)と称されている。このGVT効果を前面に出し、移植の安全性も高めた治療法が、骨髄非破壊的同種移植(ミニ移植)であり、NIHのChildらが転移性進行腎癌患者に行ったミニ移植で50%以上の奏効率を報告して現在非常に注目されている。しかし、GVHDとGVT効果は背中合わせで、時として致死的な合併症を引き起こすこともあり、臨床的に両者をいかにコントロールするかは極めて重要であるが、現状では確立された方法はない。上述のごとく、ミニ移植は臨床の現場で考案されてきた治療であるため、基礎的研究は少なく、特に腎癌については我々が調べ得た限りでは皆無であった。腎癌に対するミニ移植の動物モデルを作成すれば、臨床の現場での問題点について試行錯誤することができ、臨床へのフィードバックが期待できると考え、マウス腎癌を用いて安全かつ確実なミニ移植のモデルを作成した。我々のモデルでは抗腫瘍効果の誘導にドナーリンパ球輸注(DLI)は必須であったが、ドナー由来細胞の完全キメラは誘導されていなかった。さらにミニ移植を行って腎癌を拒絶したマウスにおいては腎癌特異的な抗腫瘍免疫が獲得されていた(Cancer Res.65:10032-10040,2005)。今年度は我々が確立したマウス腎癌に対するミニ移植の系を用いて、DLIのタイミングを遅らせることで、抗腫瘍効果を維持しつつ、GVHDのみを軽減させることに成功した(Clin Cancer Res.13:1029-1035,2007)。この概念がヒト腎癌に対するミニ移植の現場へ応用されることが期待される。
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