ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頚癌の90%以上に認められ、その中でも特にHPV16型が多く検出される。HPVのウイルス蛋白であるE6が癌抑制遺伝子p53の分解を亢進させていることが知られているが、詳細な発癌機序は不明である。本研究ではE6によるp53分解機序をさらに解明し、p53分解の阻害を可能とする新しい遺伝子治療の開発への継続を目指すものである。 ヒトの子宮頚癌Hela細胞株よりcDNAライブラリーを構築して、p53再活性化因子をスクリーニングした。いくつかの候補遺伝子のシークエンスを決定し、全長cDNAの発現ベクターを作成している。 また、p53の転写活性に与える影響を検討するために、p53の結合部位をプロモーターに組み込みリポーター遺伝子を作成した。p53の標的遺伝子(p21、mdm2、baxなど)の生理的なプロモーターを持つリポーター遺伝子も構築した。 今後はさらにこれらの遺伝子の機能解析を行い、子宮頚部の上皮細胞の癌化における意義の検討を次のように予定している。 ・これらの数種類のnativeおよびtag付の発現ベクターを作成し、ヒトの子宮癌細胞にトランスフェクトし、細胞内の局在を明らかにし、p53の局在、発現量に与える影響を免疫染色により検討する。 ・新規のp53転写活性制御因子を強発現させた細胞において、p53の標的遺伝子のmRNA、タンパク発現量に与える影響をWestern blotおよびNorthern blotで検討する。
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