研究課題
エストロゲン受容体(ER)は、エストロゲン(E2)と結合すると核内での分布が変化し、これはE2の作用発現(ERの活性化)に重要であると考えられている。一方、ERは上皮成長因子(EGF)やインスリン様増殖因子-1(IGF-1)でも活性化され、事実これらの増殖因子はエストロゲン様作用を発揮する。しかし、増殖因子によるERの核内分布の変化について検討した報告は世界的にもない。本年度も、昨年に続いて、乳癌細胞であるMCF-7細胞に、GFP-ERα(GFP-ER)またはERαのactivation function 2(AF2)領域を欠失したGFP-mutant ERα(GFP-mtER)をトランスフェクションした。共焦点レーザー顕微鏡でE2およびEGF、IGF-1によるGFP-ERおよびGFP-mtERの分布の変化を観察した。さらにEGFとIGF-1の細胞内シグナル伝達経路の阻害剤であるMEK inhibitor(PD98059)とPI3 kinase inhibitor(LY294002)前投与の影響も検討した。GFP-ERは核内に均一に存在し、E2投与後10分で核内分布が不均一な集積を呈した。EGF投与後30から60分でGFP-ERの分布がリガンド投与と同様に変化し、PD98059を前投与するとこの変化はおこらなかった。IGF-1投与でもERの分布は変化し、LY294002を前投与するとこの変化が観察されなかった。またGFP-mtERでは、E2およびEGF、IGF-1投与で核内分布の変化が観察されなかった。EGFやIGF-1によるERの核内分布の変化がはじめて確認された。さらに、この現象には、MAP kinaseとPI3 kinase-Akt系が関与し、AF2領域が必要であることが示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Endocrinology 146(9)
ページ: 4082-4089