研究概要 |
我々はテロメレースの触媒サブユニットであるhTERT promoterをクローニングし、hTERT転写発現機構を詳細に解析してきた。ダイオキシンによる遺伝子発煙誘導には遺伝子プロモーターに存在するTNGCGTGというコア配列からなるXRE(xenobiotic responsive element)と呼ばれるエンハンサー配列が必要であるが、hTERT promoter上には類似の配列が存在する。そこで我々は内分泌攪乱物質であるダイオキシジンがテロメレース発現に及ぼす影響について検討した。 1 HeLa細胞にダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzzo-p-dioxin)を種々の濃度で作用させ、48時間および72時間後にテロメレース活性をTRAP assayにて計測したところコントロール群に比べ約1.5-2.5倍の明らかなテロメレース活性の上昇を認めた。HTERT mRNAの発現をRT-PCRで検討したところ、24〜48時間後にmRNAレベルの有意な上昇を認めた。 2 3.2kbの全長のHTERT-promoter luciferase reporterを作製し、HeLa細胞にtransfect後、ダイオキシンを作用させ、48時間後にluciferase assayを行った。ダイオキシン作用によりhTERT promoterの転写活性が2-3倍に上昇した。hTERT promoterのdeletion mutantを作製し同様にluciferase assayを行ったところ、ダイオキシンに反応するpromoter領域を転写開始部上流の約800bpまでの領域に認めた。この領域はXRE類似配列を含んでいた。 3 XRE類似配列に対するダイオキシンレセプターの結合をゲルシフトアッセイで検討中したところ、binding complexが検出された。このバンドはダイオキシンレセプター抗体の添加によりsupershiftすることから、特異的な結合であると確認された。 4 結合部位に変異を導入したhTERT promoterを用いて、2と同様にluciferase assayを行ったところ、ダイオキシンによる転写活性化能はcancelされた。 以上のことから、ダイオキシンがその特異的レセプターを通じてhTERT promoter上のXRE類似配列に作用することでhTERT転写活性を調節し、テロメレース活性化をもたらす分子機構を明らかにした。
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