本研究の目的は、本学にて上皮性卵巣癌に特異的なマーカーとして免疫組織学的検討を行い開発および報告したモノクローナル抗体(12C3)を用い、悪性卵巣腫瘍患者血清中の12C3認識抗原の有無および認識抗原の性格を検討し、血清腫瘍マーカーとしての有用性を検討することである。 本抗体は抗原に卵巣胚細胞腫瘍細胞株(JOHYC-2)を用いているにもかかわらず、その認識抗原は予想に反し上皮性腫瘍に局在性が高く、上皮細胞の多層化、腫瘍細胞集団の内腔への分離増殖、核異型など悪性が疑われる領域にのみ反応を認めることが特色と言える。 本研究に先立ち、12C3認識抗原が癌細胞の浸潤・転移における細胞外基質分解に中心的役割を果たしているmatrix metalloproteinase (MMP)のinducerであることが判明し、婦人科腫瘍検体において免疫染色を行い、12C3認識抗原の発現とその予後との関連について検討した。 まず子宮頸癌49例に対し、12C3認識抗原、MMP-1、MMP-2、MMP-7を用いて免疫染色を行い、その発現を検討した。その結果、12C3認識抗原では75.5%と高い陽性率を示したが、MMP-1、MMP-2、MMP-7の発現は低率であった。検討症例は進行期I・IIのみであったため12C3認識抗原の発現と予後に明らかな相関は認められなかった。 さらに現在、進行癌を含む子宮体癌症例における12C3認識抗原やMMP-1、MMP-2、MMP-7の発現や予後との相関について検討中である。 今後、卵巣癌を含む婦人科悪性腫瘍患者における12C3認識抗原やMMPの発現および予後との相関について検討し、その血清腫瘍マーカーとしての有用性を検討する予定である。
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