研究課題/領域番号 |
16659465
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 教授 (90176339)
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研究分担者 |
辻 純 京都大学, 医学研究科, 講師 (30252448)
平塚 康之 京都大学, 医学研究科, 助手 (40324636)
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キーワード | 高度難聴 / 人工内耳 / ラセン神経節細胞 / 幹細胞 / 神経栄養因子 / 移植 |
研究概要 |
わが国には補聴器を用いても言葉を理解することの出来ない高度難聴者が30万人以上存在する。現在このような高度難聴者に対する唯一の治療法は「人工内耳」である。人工内耳内耳の最大の問題点は、信号を受ける聴神経(ラセン神経節細胞)が変性を起こしていたり、先天的に神経の数が不足している場合、人工内耳の機器の改良だけでは聴覚の回復に結びつかない。本研究では、再生医学を用いた幹細胞移植技術、DDS(Drug delivery system)などの技術を用い、ラセン神経節細胞を再生させることにより「ハイブリッド型人工内耳」なるものを目指し、高度難聴を回復させることを目的とするものである。 今回は動物を用い、内耳(蝸牛)に神経栄養因子投与し、また各種幹細胞を移植してラセン神経節細胞が保護されるか、また再生するかどうかを検討した。その結果、内耳に投与した神経栄養因子は内耳のラセン神経節細胞の保護に役立つことが分かった。さらに、内耳に移植した神経幹細胞は内耳に生着し、神経栄養因子をも放出し、細胞移植でもラセン神経節細胞の保護に役立つことが分かった。また、外胚葉方向に誘導した胚性幹細胞を内耳に移植すると、この幹細胞は内耳に生着し、神経細胞に分化し、蝸牛および中枢方面に神経突起を伸長して信号の伝達に寄与する可能性があることが分かった。 以上の結果は、人工内耳と細胞移植技術を組み合わせることにより、これまで人工内耳手術でも聴力の回復が困難である人に対しても聴覚の獲得が可能であることを示唆し、この技術は将来の人工内耳の改善、それによる難聴者の聴覚獲得に役立つと思われる。
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