研究概要 |
本年度の目標である遺伝子発現制御可能なES細胞の樹立を試みた。まず、内耳特異的転写因子であるMath1遺伝子断片をテトラサイクリン下で制御可能な発現プラスミド(pMath1)にサブクローニングした。大腸菌へのtransformation後大量培養し、transfection-gradeの精製を行い、充分量のプラスミドを得ることができた。ES細胞にはテトラサイクリン応答プラスミドを初めにtransfectionし、G418による薬剤セレクションを行い、48クローンを得た。そのうち一過性に発現プラスミドをtransfectionし、バックグラウンドが低く、応答発現が最大のクローン(tet-ES)を得た。このtet-ESに対し、プラスミドpMath1をtransfectionし、puromycinによるセレクションで、24クローンを得ることができた。そのうち、テトラサイクリンに対し、遺伝子発現量が可能なクローンを樹立できたことがRT-PCRにより確認できた(tet-Math1-ES)。現在、さらに別の内耳特異的転写因子(Brn3.1)の遺伝子導入に取り組んでおり、今年度内に樹立の予定である。来年度、さらに詳細にキャラクタリゼーションを行う。 また、これとは別にES細胞から有毛細胞へ分化する際の条件検討も行っている。具体的には、未分化なES細胞より胚様体(Embyoid body ; EB)を作成後、種々の添加剤(ホルモン、成長因子)を添加し、その時期や添加量に応じて、上記遺伝子Math1,Brn3.1の遺伝子発現変化を調べている。このような条件検討により、外的因子(添加物)と遺伝子発現制御との相関関係を調べ、分化誘導条件とそのメカニズムの解明に重要な情報を得ることが可能であると考えられる。
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