研究概要 |
昨年度、内耳特異的転写因子であるMath1遺伝子、Brn3.1遺伝子を同時に制御可能な発現システムを組み込んだES細胞(Math1-Brn3c-ES;MB-ES)の樹立に成功した。このMB-ESを用いて、種々の条件により有毛細胞様細胞への分化誘導条件を検討した。 まず、MB-ESに関しては、薬剤誘導開始から24時間以内で遺伝子の発現誘導が可能であることが、RT-PCRおよび免疫染色により明らかとなった。 そこで、野生型ES細胞(WT-ES)およびMB-ESを7日間または14日間培養し、有毛細胞特異的に発現する遺伝子(Math1,Brn3c,Myosin6,Myosin7a,a9AchRなど)をRT-PCRおよび免疫染色により解析した。その結果、WT-ESに関しては上記遺伝子群が14日間の培養で発現するのに対し、MB-ESでは7日間の培養で発現が認められるということから、Math1およびBrn3cの遺伝子発現誘導は早期に有毛細胞様の特徴を示すことが示唆された。 また、遺伝子発現制御と同時に種々の外的因子(ホルモン、成長因子)を組み合わせることで、さらに特異的な誘導が可能であるかを検討したところ、MB-ESの発現誘導と同時にBMP(骨形成タンパク)を添加して培養することで、有意に有毛細胞様細胞への分化誘導が行えることを明らかにした。さらなる条件検討により、遺伝子発現制御との相関関係を調べ、分化誘導条件とそのメカニズムの解明に重要な情報を得ることが可能であると考えられる。
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