研究課題/領域番号 |
16659473
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 春樹 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40018875)
|
研究分担者 |
福地 健郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (90240770)
上田 潤 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員
八百枝 潔 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員
|
キーワード | ミトコンドリア / 正常眼圧緑内障 / エンドセリン-1 / カニクイザル / 視神経乳頭陥凹拡大 / 眼圧上昇モデル |
研究概要 |
カニクイザルを用いた実験緑内障モデルの作製は、現時点で動物実験倫理委員会の承認が得られていないため、平行して行っているラット高眼圧負荷モデルで得られた視神経障害機構に関する知見について報告する。急性モデルの視神経乳頭、網膜でシトクロームC及び活性型カスパーゼ3に対する免疫染色とTUNEL染色を行い、また慢性モデルの視神経乳頭でミトコンドリアの微細形態学的変化を観察した。慢性モデルの視神経乳頭の軸索中には、正常なミトコンドリアに混じって、腫大しクリステの構造が消失しinclusion bodyを内包した、多数の変性ミトコンドリアの散在を認め、それらでは内・外膜の二重膜構造に破綻が見られた。急性モデルでは、眼圧上昇後1日目からシトクロームC陽性の不均一な顆粒状の構造が視神経乳頭近傍に多数集積し、網膜神経線維層では活性型カスパーゼ3の活性が上昇していた。また、3日目からTUNEL陽性の網膜神経節細胞が認め、1週目には神経節細胞数が半数以下に減少していた。緑内障モデルにおける網膜神経節細胞死に先だってカスパーゼ3の活性化と、視神経乳頭でのミトコンドリアの破壊、集積が確認され、軸索輸送障害から緑内障性視神経障害に至る過程にミトコンドリアが関与していることがラットの実験で確認された。虚血によるATPの供給低下は、それ自体軸索輸送障害の原因となるばかりでなく、集積したミトコンドリアの破綻による更なるATP産生の低下がこの病態を加速し得る。正常眼圧緑内障における眼圧に対する易障害性にこのメカニズムが関与していることを立証するためには、doseの異なるエンドセリン-1持続球後注入による視神経虚血モデルに、さらに高度・中等度の眼圧負荷を与えて、これらの形態学的、生化学的変化がATPレベルの低い神経線維では、より低眼圧で生じうることを示す必要がある。今後、サルを用いた実験の承認が得られ次第、本研究に着手する予定である。
|