研究概要 |
糖尿病網膜症では血管内皮細胞の障害から、血管閉塞、血管透過性亢進、さらには血管新生が生じる。本研究では糖尿病網膜症の進展への血管内皮前駆細胞(Endothelial precursor cell:EPC)の関与を明らかにすることを目的としている。インスリンプロモーターにiNOS遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスを作成し、モデルの評価として内皮細胞の変性、白血球接着、血管透過性の亢進を検討している。今後GFPマウスとのhybrid作成により、網膜へのGFP陽性EPCの集積とこれらの因子との相関を検討していく予定である。我々の研究により、造血因子エリスロポエチンがヒト増殖糖尿病網膜症眼の硝子体中で上昇しており、血管内皮増殖因子(VEGF)とは独立した血管新生因子としての可能性を見いだした(Watanabe, et al., N Engl J Med 2005)。血管系形成に重要なEph/ephrin系がin vitroおよびin vivoでの血管新生作用、VEGF誘導による血管透過性亢進に関与していることが明らかとなった(Ojima, et al., Am J Pathol 2005)。血管壁の安定化に関わるアンジオポエチン/Tie2は網膜血管新生にも関与する。我々の研究によると、増殖糖尿病網膜症患者の硝子体中アンジオポエチン2濃度は非糖尿病患者と比べて有意に増加しており、網膜症発症への関与が示唆された(Watanabe, et al., Am J Ophthalmol 2005)。さらに、糖尿病の代謝異常のひとつに酸化ストレスがある。我々の研究により、アンジオポエチン1がH202誘導性の血管内皮のアポトーシスを抑制する事を見いだし、これはPI3-kinase/Aktを介して、SEK1/JNKのリン酸化を抑制することによることが分かった(Murakami, et al., J Biol Chem 2005)。
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