研究概要 |
手術で切除した肥厚性瘢痕、ケロイド、成熟瘢痕、正常皮膚の各3検体から凍結切片を作成し,抗CD1a抗体と抗RhoB抗体による2重蛍光染色を行った。検討には各検体で典型的な所見を示す2視野を同条件で撮影したデジタル画像を用いた。 (1)画像解析ソフト(Scion Image)で陽性細胞の数と、表皮の全細胞数をカウントし全細胞数に対する陽性細胞の比率を検討した。 1)CD1a陽性細胞の比率は,瘢痕とケロイドで有意に増加していた。 2)RhoB陽性細胞の比率では、CD1a同様瘢痕組織で増加傾向を認めるものの、有意差はケロイドでのみ認められた。 (2)組織別にCD1aとRho Bの陽性細胞の比率を比較したところ,瘢痕およびケロイドでは有意にRhoB陽性細胞の比率が減少していた。 (3)考察 1)多くのCD1a陽性細胞とRho B陽性細胞が一致していることから,Rho B陽性細胞は表皮樹状細胞であることが明らかになった。 2)突起での発現の差や,CD1aのみ陽性やRho Bのみ陽性の細胞が確認されることから,表皮樹状細胞の不均一性が示唆された。 3)陽性細胞数は、RhoBでもCD1aと同様に肥厚性瘢痕やケロイドで増加傾向にあり、上皮化に伴い表皮内に樹状細胞が遊走してきて肥厚性瘢痕では正常皮膚より多い樹状細胞が見られ、瘢痕の成熟に伴い減少してゆくというこれまでの報告に矛盾しなかったが,RhoB陽性細胞の比率が瘢痕組織で減少していることから、RhoBの発現増加はCD1aよりも遅れて起こることがわかった。
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