研究概要 |
生後2日齢マウスの頭蓋骨より、酵素処理により骨芽細胞系間葉細胞を採取した。10%胎仔血清含有基礎培地(増殖培地)にて1週間増殖させた。コンフルエント後、細胞を再播種し、アスコルビン酸およびβ-グリセロリン酸を含有した増殖培地(誘導培地)で骨芽細胞へと誘導培養した。この場合、種々の濃度のシンバスタチンを添加した。培養後7,14,21,28日目において、ALPase染色、von-Kossa染色、Alizarin染色ならびに、ALPase活性の測定、カルシウム含有量の測定をおこなった。シンバスタチン添加群では、濃度依存的に染色性の強度さが観察された。また、ALPase活性の測定ならびにカルシウム含有量も増加していた。ビタミンD3刺激下における4週齢マウスの長管骨より、骨髄細胞を採取した。活性型ビタミンD3刺激を10日間おこない、破骨細胞様細胞を誘導させた。この際、種々の濃度のシンバスタチンを添加した。培養10日後、破骨細胞のマーカーであるtartrate-resistant acid phosphatase (TRAP)にて染色をおこない、3核以上を有するTRAP陽性細胞を算出した。TRAP陽性多核細胞は、シンバスタチン濃度依存的に減少していた。現在、破骨細胞の生存ならびに骨吸収能について検討中である。 以上の事から、高脂血症作用薬であるシンバスタチンは、骨芽細胞に作用して骨形成促進作用を有するとともに、破骨細胞に作用して、骨破骨細胞分化阻害効果を有していた。したがって、シンバスタチンは骨代謝に対して、骨形成を積極的に促進する理想的な治療薬である事が示唆された。 今後は、骨芽細胞ならびに破骨細胞におけるシンバスタチンの分子レベルでの作用機序の解明を目指していく予定である。
|