研究課題
硬組織であるエナメル質、象牙質、骨を形成する細胞外マトリックス蛋白質のほとんどはSPARC(secreted protein acidic and rich in cysteine/osteonectin/BM-40)を祖先遺伝子として遺伝子重複を繰り返して派生してきたものと考えられている。これらの遺伝子はSecretory calcium-binding phosphoprotein(SCPP)familyと呼ばれ、SPARCの遺伝子重複により派生してきたSPARCL1を直接の祖先遺伝子として、ヒト第4染色体長腕上の遺伝子SPARCL1(SPARC-like1)の前後に連鎖して遺伝子群を形成している。エナメル質特異的蛋白質のうちアメロジェニンだけは例外として性染色体に転座している。これらの遺伝子群はSPARCL1の上流5'の部分(蛋白質ではドメインIに相当し酸性度が非常に高い)が重複、欠失、挿入を繰り返してできたもので、エクソン3以降のエクソンの数、長さは様々であるが、遺伝子構造とイントロンのフェイズにはSPARCL1と同じ構造が存在する。SPARCL1とSPARCは別々の染色体上にあり、SPARCL1はSPARCの遺伝子重複により派生してきたものであるが、その分岐した時期が未だ不明である。なぜならSPARCL1とSPARCは硬骨魚類には見つかっているが、軟骨魚ではそのどちらも見つかっていない。SPARCはホヤ、線虫には見つかっているので系統樹のアウトグループとなるが、肝心の軟骨魚、無顎類のデータがないためSPARCL1とSPARCの分岐、進化を論ずることはできない。そこで、SMART cDNA library construction kitを使って製作した、サメ(マーブルシャーク)の顎を含む頭部のdirected cDNAライブラリーを用いた。培地にまいたプラークをピックアップし、それぞれのプラークから挿入部分のシークエンスをPCRで増幅し、PCR産物を精製後、挿入部の5'側にアニールするプライマーを用いてダイレクトシークエンスを行った。シークエンスをNCBI databaseに対してBLASTXを行なったところ、一つのシークエンスが哺乳類,鳥類、両生類、魚類すべてのSPARCに非常に高いホモロジーを示した。このサメのSPARCの部分シークエンスを持つクローンについては同定してあり、今後クローン全長の塩基配列決定を行う。次に、ドメインIIとドメインIIIのシークエンスはSPARCL1とSPARC間ではよく保存されているのでSPARCL1の同定も試みる。同様にSPARCのシークエンスを基に、この遺伝子から遺伝子重複で生じたかもしれないSCPP遺伝子群の同定を試みることも可能となる。
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