研究概要 |
本年度は、生体防御系におけるエンドリソソーム系アスパラギン酸プロテアーゼのカテプシンEの役割について解析した。カテプシンEは抗原提示細胞やリンパ球などの免疫担当細胞に多く発現し、活性化に伴いその多くが細胞外に分泌される。我々は、カテプシンE欠損マウスを世界に先駆けて作製し、その性状を解析してきた。今回、カテプシンE欠損マクロファージの性状と機能変化をさまざまな角度から検討した。カテプシンE欠損マクロファージは正常マクロファージに比べて、各種Toll-like receptorsのリガンドに対する応答性が悪く、各種細菌の感染に対して抵抗性が低いことが示された。細胞表面ならびに細胞全体の各種Toll-like receptors量をFACSで解析すると、全体量はカテプシンE欠損マクロファージと正常細胞で変わらないものの、細胞表面の発現量が前者で有意に減少していることが明らかにされた。一方、カテプシンE欠損マクロファージでは、正常細胞に比べて、リソソーム性膜シアロ糖蛋白質のLAMP-1,LAMP-2およびLIMP-2/LGP85が蓄積していること、これと並行して、リソソーム性pHが有意に上昇していること、および可溶性リソソーム性蛋白質の細胞外分泌が亢進していることが示された。LAMP-1,LAMP-2およびLIMP-2/LGP85のmRNAレベルや生合成には異常が認められず、ターンオーバーレートが遅延していることから、カテプシンEがこれらの膜蛋白質の分解に直接関与していることが強く示唆された。カテプシンE欠損マクロファージにおけるLAMP-1,LAMP-2およびLIMP-2/LGP85の蓄積とリソソーム性pHの上昇が細胞機能にどのような影響を及ぼしているのかを調べる目的で、細菌感染に対する殺菌能ならびに外来蛋白質の分解能について解析した。その結果、カテプシンE欠損マクロファージは正常細胞に比べて、殺菌能および外来蛋白質の分解能のいずれも著明に減少していることがわかった。以上の結果から、カテプシンEはリソソーム性膜シアロ糖蛋白質の分解に直接関与し、それを通じて、エンドリソソーム性蛋白質分解システムの正常性を維持し、細胞機能の恒常性に寄与していることが明らかとなった。
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