研究概要 |
平成16年度は,システムの構築を行うに際して,統計学的パワーを得るため,当初200名の閉経後女性患者データを収集することを目的とした.結果,148名の患者データを収集することができた.このうち,除外診断により,使用可能なデータは101名であった.本年度は,従来の心血管系疾患のリスク因子であった一般的な生化学的データ及び血管内皮機能測定値に加え,近年注目されている酸化LDL値及び高感度CRP値のデータを92名の患者において得ることができた.パイロット解析では,我々が心血管系疾患の予測に用いる歯科用パノラマX線写真の下顎骨皮質骨形態指標(骨櫨化指標)を有する女性は,有しない女性に比して高い酸化LDL値を有する傾向を示した(110.0±6.8 vs. 124.4±9.6,P=0.231).また,指標を有する女性は,有しない女性に比して高い高感度CRP値を有する傾向があった(0.050±0.031 vs. 0.082±0.047,P=0.609).未だ症例数が少なく,統計学的に有意差を認めてはいないが,パノラマX線写真における下顎骨皮質骨粗鬆化指標を有する女性は,将来心血管系疾患を有するリスクが高いことが示唆された.次年度は,さらに症例数を増やして,酸化LDL値と高感度CRP値を予測する際のパノラマX線写真における下顎骨皮質骨粗鬆化指標の有用性を検討する. 平成16年度は,データ収集以外に,従来の心血管系疾患のリスクに関連する生化学的データ及び血管内皮機能測定値を推測するための,ファジー推論を用いた自動診断システムを構築した.これにより,パノラマX線写真の皮質骨形態変化及び厚み指標から,自動的に血管内皮機能を推測するシステムの構築に成功した.
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