研究概要 |
本年度は,食品摂取可能度の判定に用いられる被験食品のテクスチャーを測定し,主観的な咀嚼可能度とテクスチャーとの関係を検討した. 被験食品については,まず過去の報告を参考に50品目を選択し,予備調査の結果より,様々な摂取可能度の9品目を選択した.これらの被験食品の摂取可能度(「普通に食べられる」,「小さくすれば食べられる」,「困難だが食べられる」,「食べられない」など)を,60歳以上の830名(平均年齢66.0±4.2歳)を対象に調査したところ,「普通に食べられる」と回答した者の割合は,ごはんが最も高く(97.5%),次いでパン,かまぼこ,キャベツ,こんにゃく,ピーナッツ,焼いた牛肉,りんご,の順となり,堅焼きせんべい(61.8%)が最も低くなった. 次に,前述の9食品と検査用グミゼリーのテクスチャーを,厚生労働省高齢者食品規格基準に準じ,テクスチャーアナライザーおよび分析用ソフトウェア(島津製作所)を用いて測定した.食品の圧縮に用いる圧子は,断面が直径4mmの円形である平型プランジャーとし,食品の厚径が1/3になるまで荷重した.その結果,各食品圧縮時の荷重変化様相(テクスチャーパターン)は,遅延弾性型(こんにゃく,かまぼこ,検査用グミゼリーなど),塑性弾性型(ピーナッツ),脆性破壊型(固焼きせんべい,りんご)の3種類に分類された.また,最大荷重の標準偏差は,塑性弾性型と脆性破壊型の食品は大きく,各試料の差が大きくなったが,逆に検査用グミゼリー,こんにゃく,かまぼこなど遅延弾性型食品は小さく,安定した値が得られた. さらに,圧縮試験時の最大荷重と食品摂取可能度との関係を検討したところ,Spearmanの順位相関係数の検定において,両者には強い負の相関がみられた. したがって,食品のテクスチャーは,主観的な摂取可能度に強い影響を及ぼすことが示唆された.
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