研究概要 |
骨組織構造に類似した三次元的構造を持つ、連通多孔性ハイドロキシアパタイト(多孔性HA)に多分化能を持つ間葉系幹細胞(MSC)を導入することで自家骨に代わる骨形成能を付与したバイオハイブリッド人工骨の開発を試みた。ビーグル犬腸骨よりMSCを含む骨髄間質細胞を採取し、bFGFを用いた超高速増幅法により短期間に必要量の細胞培養・増殖を行った。これらより得られたMSCを,三次元的構造を持った多孔性HA内へ導入、走査型電子顕微鏡による観察を行った。導入したMSCは多孔性HA内部に広範囲に分布しており、中心部においても観察された。また、導入細胞は伸展しアパタイト表面に付着している像が観察された(実験1)。次に、バイオハイブリッド人工骨を生体内に移植し、骨形成能を評価した。まず、蛍光色素標識を施したMSCを導入したバイオハイブリッド人工骨(直径3.7mm、高さ7mm)を動物大腿骨に円柱状骨窩(直径3.7mm,深さ7mm)を形成し埋入した。埋入4週後、組織ブロックを採取し、凍結組織切片を作製した後、蛍光顕微鏡で観察を行った。蛍光観察により、組織形成部に相当する部位において、蛍光発色が観察され、導入したMSCによる組織形成が行われたことが確認された(実験2)。次に、多孔性HAおよびバイオハイブリッド人工骨を、実験2と同様の手法で、動物大腿骨にそれぞれ埋入し、骨形成能を比較検討した。埋入4週後、組織ブロックを採取し、脱灰標本を作製した後、HE染色を行い組織観察を行った。皮質骨欠損部の骨欠損辺縁部では全ての条件で骨形成が確認され、骨欠損中央部ではバイオハイブリッド人工骨の方が多孔性HAと比較して、顕著な骨新生像が観察された。以上,本研究においては,多孔性HA内にMSCを組み入れることに成功し,作製したバイオハイブリッド人工骨による著明な骨形成を得、自家骨に代わる新たなる人工骨移植材の開発に成功した。
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