研究概要 |
本研究では幼若永久歯の小窩裂溝齲蝕予防、さらには歯牙の亀裂や小実質欠損部の修復、そして歯質と修復物の融合などを目的として、歯科用レーザーを用いたリン酸カルシウムのエナメル質表面への融着を試みた。具体的には,エナメル質表面に貼付されたリン酸カルシウム粉末あるいは硬化させたリン酸カルシウム系セメントに炭酸ガスレーザーを照射し,エナメル質へリン酸カルシウムを融着させる。 融着材の組成およびレーザー照射条件は,レーザー照射による歯牙の熱損傷,レーザー融解時の融着物の組成変化,そして融着物の溶解性などを考慮して決定する必要があり,照射するレーザーのエネルギー密度はできる限り低いことが望まれる。そこで平成16年度においては、融着材としてリン酸一カルシウム1水和物(monocalcium phbsphate monohydrate, MCPM)とリン酸二カルシウム2水和物(dicalcium phosphate dihydrate, DCPD)を選択し,その圧粉体にエネルギー密度を変えて連続波炭酸ガスレーザーを照射し,融解域の形状と大きさ,そしてその加熱相変化を調べた。 その結果,レーザ照射痕の形状はMCPMおよびDCPDのいずれにおいても半楕円形の溶融域と中心部にクレーターが観察された。溶融域およびクレーターの半径はエネルギー密度の低下と共に減少するが,MCPMでは103.5J/cm2のエネルギー密度でクレーターは消失した。また照射痕の深さは,MCPMではおよそ200μm,DCPDでは150μmであり,照射したレーザーのエネルギー密度に大きく依存しないでほぼ一定であった。照射痕の微小焦点X線回折から,MCPMでは全てのエネルギー密度で溶融域はガラス化していると考えられた。一方DCPDではβ型ピロリン酸カルシウムの生成が明らかになった。
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