本研究は、アメロジェニンとリボン状アパタイトを複合化することによってエナメル質の代替材料となる複合体の開発を目指したものである。 本年度では、エナメル質基質タンパク質の主成分であるアメロジェニンゲルの中で、エナメル質様アパタイト結晶の効率的な析出が主眼となった。アメロジェニンの生合成は、海外研究協力者である南カリフォルニア大学のDr.Janet Moradian-Oldakの研究グループによって行われた。カルシウムイオンの拡散を制御する陽イオン交換膜と、アメロジェニンを反応セル内に閉じ込めるための透析膜を組み合わせることによって、エナメル質形成のモデル実験系を作製した。この実験系で、アメロジェニンゲルの中でエナメル質結晶のようにc軸方向に長く成長したアパタイト結晶を成長させるための最適条件を検討した。その結果、弱酸性の条件で1ppm Fを共存させた時に、c軸方向に伸長したアパタイト結晶を密に配向成長させ、エナメル質に類似した構造を持つ組織を得ることができた。微量のFにより、アパタイト形成が促進され、成熟期のエナメル質結晶に類似したプリズム状の形態となり、結晶が高密度で形成されることがわかった。本研究成果の一部を2004年Gordon Research ConferenceのBiomineralization部門にて発表した。
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