研究概要 |
最終年度となる本年度において、胎生期のマウス歯胚細胞と担体を組み合わせることで歯の再生に成功した。その再生歯胚組織は、今までにわれわれが用いていたブタの再生歯胚組織とは異なる歯の再生過程を示した。 マウスE12およびE14マウスから第一大臼歯歯胚を取り出し、酵素処理にて細胞を単離し後、ポリグリコール酸で作られたメッシュに細胞を播種し、マウスの腎被膜下に移植した。移植3,5,7,10,14日後に細胞を播種した担体を取り出し、組織学的に評価した。さらに、細胞を播挿した担体を取り出す前にbromodeoxyuridine(BrdU)を移植されたマウスの腹腔内に投与し、細胞の増殖動態を観察した。移植5日目において上皮細胞の凝集を確認した。移植後7日目において、帽状期の歯胚の形態を示し、移植後10日目においては、鐘状期の歯胚の形態を示した。14日目においては、歯冠の形成が確認された。最初に凝集した上皮細胞が幹細胞であることが示唆されるが、この細胞の特性を同定することはできなかった。これについては次の課題として計画している。 今回の研究で最も有益であったことは、再生した歯の形態が天然の歯とほぼ同じであったこと、さらに、再生した歯の大きさもほぼ同じであったことである。この結果は、ブタの細胞を用いた場合には観察できなかった。ブタの再生歯の形態は正常と異なり、大きさも2-3mmと著しく小さい。つまり、このマウスの再生組織とブタの再生組織の再生過程を比較し、その異なる点を解析することで、ブタの細胞でも正常な歯の形態を持ち、且つ大きさも同等な歯の再生が可能となることが予想できる。したがって、今回の研究から得られた結果は、幹細胞の同定はできなかったものの、これらの問題点を克服する手掛かりを与えられ、意義深いものであった。
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