研究概要 |
口腔癌において放射線療法(RT)、5-fluorouracil(FU)製剤(UFT或いはTS-1)及び免疫療法剤OK-432の同時併用療法が極めて有効であること(Apoptosis,1997)、OK-432がToll-like receptor(TLR)4を介して抗腫瘍免疫活性を発現すること(Cancer Res, 2004,J Natl Cancer Inst, 2003)を報告した。Suppressor of cytokine signaling(SOCS)-1はTLR4シグナル活性化により誘導され、同経路を阻止しサイトカイン誘導を抑制する。OK-432がSOCS-1を誘導し抗腫瘍免疫活性が抑制されている可能性がある。本研究では、OK-432によるSOCS-1誘導に及ぼすRT、5-FUの影響につき検索した。1)RT+UFT或いはTS-1+OK-432同時併用療法を受けた口腔癌患者より、治療前及びOK-432投与24時間後に採取した末梢血単核球(PBMC)においてSOCS-1遺伝子の発現増強は認めなかった。この時IFN-γ及びTNF-αの誘導を認めた。2)in vitro実験にて、健常人由来PBMCをOK-432或いはOK-432活性成分リポタイコ酸関連分子OK-PSAで処理するとSOCS-1遺伝子の発現増強が認められた。OK-432、OK-PSAによるSOCS-1発現増強作用は、RT或いは5-FUで同時に処理する事により抑制された。3)この時の培養上清中のサイトカインをELISAにて検索した。OK-432或いはOK-PSAによるTh1サイトカイン(IFN-γ、TNF-α及びIL-12)の誘導は、RT或いは5-FU処理により影響を受けなかったが、Th2サイトカイン(IL-6、IL-10)ならびにTGF-β誘導は有意に抑制された。4)OK-432/OK-PSAによるnitric oxide(NO)の産生は5-FU及びRT併用により増強された。5)PBMCのin vitro癌細胞障害活性(^<51>Cr遊出法)でも同様の結果が得られた。6)PBMCをOK-432或いはOK-PSAで刺激する時、アンチセンスODNを用いてSOCS-1発現を抑制することにより、IL-6、IL-10及びTGF-βの誘導は有意に抑制された。5-FU及びRTはOK-432/OK-PSAによるSOCS-1の発現増強作用を抑制することにより、Th2及びTGF-β産生を抑制し、抗腫瘍免疫反応の増強に重要な役割を担っていることが強く示唆された。
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