嚥下造影検査や内視鏡検査などの方法では解明が困難であった嚥下運動を、4次元MRIによって立体動画像として描出し、得られる詳細な解析結果に基づいてシミュレーションロボットを製作して、生理運動の解明と障害の評価法・治療法の開発に繋げるのが本研究の目的である。 初年度の舌の送り込み運動の再現に加えて、今年度は舌骨と喉頭の運動、咽頭腔の閉鎖機構を解析した。 まず同期サンプリング法によって得られたMRIを3次元可視化用のソフトウエア(AVS/Express)上でボクセルサイズを1mm^3に変更(線形補完法)して3次元構築画像とし、これを時間軸上に配列して4次元画像として、咽頭腔、喉頭腔、食道腔の形態変化を分析した。その結果、咽頭腔は咽頭前壁に中心をおく三日月形であり、嚥下時は側方部から閉鎖が始まり、最後に後方部が閉鎖されることが分かった。また、食道腔は類円柱形で咽頭腔が閉鎖に引き続いて解放されることが明らかになった。 この分析結果に嚥下造影画像を加えて、舌骨と喉頭の前上方運動と咽頭腔の閉鎖機構を検討し、それぞれ回転運動と前上方運動成分から成ることを明らかにした。次いで、舌骨と喉頭壁を製作して、初年度に製作したロボットの骨格系に取り付けた。次いで、蒟蒻を舌で送り込み、咽頭腔を越えて食道まで送るように実験した。アクチュエイターにはMcKibben型人工筋肉を使用した。しかし、蒟蒻は喉頭蓋谷部で止まってしまうことが多く、咽頭腔の収縮機構と食塊の送り込み機構にはさらに検討する余地があった。来年度はそのため、4次元MRIや嚥下造影画像から得られた画像をさまざまな角度から解析して、ロボットの機構の改善につなげる必要があると考えている。
|