研究概要 |
内因性Msx1アンチセンスRNAとMsx1遺伝子の相互作用が先天性歯胚欠如に関与している可能性を検証するため、歯胚形成過程でのMsx1およびPax9の内因性アンチセンスRNAの増減と、各々のセンスRNAとアンチセンスRNAの相互作用による転写活性への影響を調べる動物実験に着手した。 1)マウス胎仔歯胚発生領域でのMsx1およびPax9の内因性アンチセンスRNAの検出 麻酔下にて妊娠マウスから胎生9,12,15,18日目の胎仔を分離し、歯胚発生領域を含めた顎体部よりtotal RNAを抽出した。得られたサンプルについて、RT-PCRによりMsx1およびPax9のセンスRNAおよびアンチセンスRNAの検出を試みた。現時点ではMsx1のセンスRNAおよびアンチセンスRNAの検出について良好な結果を得ている。また、Msx1およびPax9のセンスRNAおよびアンチセンスRNAについてのin situ hybridization法による検出については、胎仔マウスを母から分離したのち急速凍結切片を作製し、digoxigeninでラベルした非放射性プローブでのシグナル検出を試みている。各RNAの発現部位の同定は、十分なシグナル強度を得るための実験条件が確定したのち、次年度に行う予定である。 2)神経幹細胞の胎仔顎骨部への移植と移植後の歯胚への分化についての検討 胎生15日目のマウス胎仔の線条体より神経幹細胞を採取し、浮遊状態で維持したのち胎生18日目のマウスより分離した顎骨体部に移植し、培養を行った。その際、移植する幹細胞は分化後にその由来を明らかにするためGFPトランスジェニックマウス由来のものを用いた。培養顎骨組織を4%paraformaldehydeにて固定したのち、薄切切片を作製して神経幹細胞がどのような細胞に分化したかについてレーザー共焦点顕微鏡による蛍光観察を行った。現時点では、グリア細胞様の形態を示す細胞への分化を確認しているが、歯胚組織との関連性、移植細胞でのMsx1およびPax9発現については次年度に検討する予定である。
|