研究概要 |
破骨細胞の分化と同様に、破歯細胞の分化もRANKリガンドとその抑制因子OPGが調節すると考えられている。しかし、OPG遺伝子欠損マウスでは、骨吸収は著明に亢進するが、歯根吸収は全く認められない。我々は、マウスとヒトの細胞を用いて破骨細胞形成阻止因子の産生に関する実験を行い、以下の結果を得た。(1)ヒト歯根膜を含む各種の細胞が、破骨細胞形成阻止因子を産生するか解析した。歯根膜も破骨細胞形成阻止因子を産生するが、ヒト末梢血から調製したCD14陽性細胞がとりわけ強く破骨細胞形成阻止因子を産生していることを明らかにした。(2)興味深いことに、骨吸収因子であるPGE_2は、ヒトCD14陽性細胞からの破骨細胞形成阻止因子産生を著しく増強させた。(3)ヒトCD14陽性細胞が産生する破骨細胞形成阻止因子は、ヒトの破骨細胞形成のみならずマウスの破骨細胞形成も強力に抑制した。(4)破骨細胞形成を抑制することが知られている既知のサイトカイン(GM-CSF,IL-4,INF-γ)に対する中和抗体を用いて解析したところ、破骨細胞形成阻止因子は新規のサイトカインである可能性が示された。(5)DNAマイクロアレイで、PGE_2刺激でヒトCD14陽性細胞が産生するサイトカインを解析したところ、GM-CSF,IL-4,INF-γはPGE_2刺激でCD14陽性細胞が産生するサイトカインではないことが確認された。 以上の知見より、マウスとヒトの破骨細胞形成に対して、PGE_2は異なる作用を有することが明らかにされた。また、ヒト破骨細胞前駆細胞はPGE_2に反応して、破骨細胞形成を抑制する新規のサイトカインを産生することが示された。
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