研究概要 |
【目的】 機械的刺激が培養ヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)に及ぼす遺伝子発現変化を,マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。 【材料と方法】 1.HPLFの刺激およびRNAの抽出 HPLFに,Flexercell Strain Unitを用いて機械的刺激を0.5,1,2,16時間与え,全RNAを回収した。刺激は1分間に6回の割合に5秒間ずつの緊張と弛緩を繰り返し行った。刺激を与えないものをコントロールとした。 2.マイクロアレイ解析 機械的刺激が細胞に及ぼす遺伝子発現変化を,Human Genome Focus Array(Affymetrix;約8,500遺伝子)を用いて,標的遺伝子のmRNA発現量を調べた。統計的手法を用いて解析した。 3.発現を変化する標的遺伝子の抽出とその機能 機械的刺激による発現量の変化が2倍以上を示した標的遺伝子として抽出した。それらの既知の機能をGeneSpring databases(Silicone Genetics)で調べ,系統別にカテゴリ分類した。 【結果】 1.標的遺伝子の抽出とその機能 機械的刺激によってその発現量が2倍以上変化するものは122であった。これらの標的遺伝子は,発現動態から8つのクラスターに分けられた。全てのクラスターはCell Growth and Maintenanceカテゴリ,あるいはIntracellular Signalingカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。遺伝子の発現動態とcategoryに関係を見つけることができなかった。しかしながら,各々のクラスターは,Intracellular SignalingあるいはCell Surface Linked Signal Transductionカテゴリに属する遺伝子を含んでいた。 【考察と結論】 HPLFにおいて,機械的刺激は,外界からの刺激を感知しそして細胞内へシグナルとして伝える分子だけではなく,細胞増殖や代謝に関わる分子の発現に役割を果たすと考えられる。
|