研究概要 |
本研究ではヒトセメント芽細胞に特異的に発現する遺伝子を探究することを目的に以下の研究を行った。ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を(1)象牙質片との共培養および(2)ヒト・歯周靱帯由来細胞との共培養を行うことによってセメント芽細胞様細胞へと分化させた。hMSCの分離・培養は広島大学大学院医歯薬学総合研究科で用いられているhMSCの分離・培養技術を用いて、ヒト腸骨骨髄液からhMSCを分離培養した。(1)象牙質片とhMSCの共培養では矯正学的理由により抜歯された小臼歯からセメント質、歯周靱帯および歯髄を除去し細かく砕いたものを象牙質片とした。象牙質片とhMSCを直接接触させた共培養後、細胞からtotal RNAを抽出し、骨(セメント質)関連タンパク質のmRNA発現をRT-PCR法を用いて調べた。象牙質片との直接接触させた共培養によってhMSCのosteopontin, osteocalcin, bone sialoproteinのmRNA発現が有意に増加した。象牙質片とのフィルターを介した共培養によってhMSCの骨(セメント質)関連タンパク質のmRNA発現に変化はみられなかった。(2)ヒト歯周靱帯由来細胞とhMSCのフィルターを介した共培養後、細胞からtotal RNAを抽出し、骨(セメント質)関連タンパク質および腱に高発現する遺伝子のmRNA発現をRT-PCR法を用いて調べた。ヒト歯周靱帯由来細胞が分泌する液性因子によってgrowth and differentiation factor-5,bone sialoproteinのmRNA発現が有意に増加し、bone morphogenetic protein-2のmRNA発現が有意に減少した。(1)および(2)によって得られた細胞群をセメント芽細胞様の特性を持っていると考え、細胞群が発現する遺伝子をマイクロアレイを用いて解析を進めている。
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