研究概要 |
1.データの収集とゴールデン・スタンダードの決定 広島大学病院を受診した患者30名に対し,研究の目的と内容について合意を得た後,歯周画像をデジタルカメラで撮影し,実験用の画像データとした.実験用のデータには,患者を特定する情報は含まれていない. 収集した30例の歯周画像データに対して,表1のORI判定基準の基づき,経験のある3人の歯科医師の合議によって,歯周状態の5段階の評価を決定した.判定は,デジタイズした歯周画像データをコンピュータ上に表示して行った.+2の評価が5症例,+1の評価が6症例,0の評価が7症例,-1の評価が6症例,-2の評価が6症例であった.5段階の評価ごとに,ほぼ均等に症例を集めることが出来たため,これらのデータを初期の実験・開発のための歯周画像データとして用いた. 2.コンピュータ支援診断の開発 開発の初期段階として,5段階の評価を行うことは困難であるため,ORIの判定が+2の評価の5症例と,-2の評価の6症例を用いて開発を行った.まず,歯科医師がORIの判定に用いる歯垢量と歯肉炎の程度を定量的に計測するための手法を開発し,次に,ORI+2の症例とORI-2の症例の判別能力を評価した. 2(1)歯垢量の定量化 歯周画像データを分析したところ,歯垢の量が多いと判定された症例は,歯の領域内で黄色の色成分が多いことがわかった.歯の白色と歯垢の黄色の違いは,青色成分の比率に違いによるものである.歯垢の量が多いと判断された歯周画像では,歯の領域内における青色成分の比率が高かった. 2(2)歯肉炎の程度の定量化 歯肉炎の程度の定量化は,下顎前歯の歯茎の形状によって行った.歯肉炎の程度が良い症例では,形状が鋭く変化していたが,歯肉炎の程度が悪い症例では,形状が鈍く変化していたので,変化の傾きの鋭さを計測することによって,歯肉炎の程度を定量化した.
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