研究概要 |
看護師がうつ病患者とかかわる時、患者を共感的に理解しようと試みる。しかし、看護師は本当に共感的理解ができるのだろうか。この研究問題に対し、Schwartz BarcottとKim(1986,1993)によって開発されたハイブリット法によって共感に関する研究論文のなかでどのように共感という概念が用いられているのかを分析し、さらに実際の臨床場面ではどのような現象か生じているかを調査することで検討するものである。今回はその第1段階としで、内外の研究論文30編あまりから"共感"の定義と属性、共感が発生する条件、帰結について検討した。 その結果、共感が生じるための先行因子として看護師の認知能力、自我の成熟度が認められ、看護師は必ずしも共感できる状態にあるとはいえず、看護師が無意識に共感の発生を抑制することもあり得ることが示唆された。しかし、共感の帰結として患者が治療や看護に対し、満足を得ることが明らかとなっている。共感されることで患者自身が自分の健康問題を直視する勇気を持ち、感情のコントロールと情報の整理を促進することかできる。そのため、看護師が共感的な理解をおこなうことは、患者のQOLを高めることに寄与すると考えられた。この他、患者との間で展開される共感場面は、言語的および非言語的コミュニケーションの過程、ケアリングの時、治療的関係を構築し維持している時が想定された。 今後、この第1段階において共感の操作的定義をおこなった後、ハイブリッド法の第2段階であるフィールドリサーチの実施に移行する予定である。本研究の課題であるうつ状態の患者を共感の対象としたとき、特にうつ病患者にとって共感体験は他者と分かり合える感覚となり、苦痛緩和のために重要であるが、彼らはネガティブな感情や思考の停滞等を伴うため上記の先行因子を伴わない看護師は一層彼らとのかかわり時に脅威を感じることが予測された。今後この点をさらに追究してうつ状態にある患者に看護師が共感できるための教育的示唆を検討していきたい。
|