市町村の合併に伴い、保健師は保健活動のかかわる多様な変化を体験している。保健活動の変化には、その活動内容、実施体制、対象者と健康問題、地域の保健医療福祉にかかわる状況などが大きく関係する。加えて、保健師の心身へも大きな影響を及ぼす。これらの関係を「移行」の理論を用いた概念に基づき、市町村合併を経験した保健師に半構成的面接調査を実施した。対象者はG県内で市町村合併した地方自治体に勤務する保健師で、面接の協力を得られた27名である。面接記録を内容分析した結果として、保健活動の体制の変化および保健師への影響を把握できた。保健活動の体制の変化では2つの形があった。すなわち、合併に伴いすべての保健活動を統一し、かつ保健師の活動拠点を1箇所に集約した自治体と、合併前の各市町村の保健活動を最低限の統一をするにとどめ、保健師の活動は従来の保健センターで実施している自治体とであった。前者の自治体の保健師は、合併に伴う保健師自身への影響が大きく、新たな体制の中で自らの役割を見出す努力をかなり要していた。また保健活動では従来の市町村で自ら事業を起こしたり、地域の人々との深いかかわりがあった活動に、新たな市町村では携われなくなったことによる精神的影響を示した。加えて、従来の市町村では、小規模な町村の保健師は、個人や家族の状況を十分に把握して保健指導を展開できていたが、新たな自治体での住民をまだ十分に把握できないことや、多数の住民への保健指導を展開するためのとまどいが見られ、保健師の役割をどのように遂行するべきか悩むといった移行に伴う保健師への影響が大きかった。合併前後で同じ保健センターで保健活動を展開している保健師は、今後、保健師が他の地域へ移動したり、人数を減少させられるのではないかといった不安を持っていた。しかし、市町村合併は保健活動を見直すよい機会であったという積極的な意見もあった。
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