本研究の目的は、思春期精神科病棟の看護者の感情疲労を軽減するためのピアサポートグループを導入することである。本年度は、ピアサポートグループ導入のための現状分析を目的とし、週1回の対象病棟でのフィールドワークと看護者への個別のインタビューによりデータを収集した。フィールドノーツとインタビュー内容の逐語録を作成し、それらを基にデータ分析を行った。児童精神科の専門家および児童精神分析と看護者の感情疲労の研究の専門家と分析を行い分析の妥当性を高めた。またフィールドワークを行う病棟には文書で研究目的を示し、許可を得た。さらに個別インタビューの対象者には、インタビューの目的を文書と口頭で説明し、同意書への署名を求めた。フィールドワークにおける観察やインタビュー参加を拒否する権利は適宜文書、口頭で説明し、さらに苦情申したてについても説明することで予測される倫理的問題に対処した。 愚痴や患者、家族、看護の問題点を話し合うインフォーマルなグループが存在し、比較的良好な看護者の感情をサポートするシステムが存在していた。しかし、ここ数年の患者の病気の層の変化や短期入院者の増加によりスタッフ同士で話し合う時間がもてなくなってきていた。 看護者は、思春期の患者をケアすることで自らの思春期に置き去りにし抑圧していた課題に直面していた。その課題への対処は、看護者により個人的に対処されていた。積極的にサポート求める傾向の看護者は、思春期の患者や家族によって突きつけられる問題に、看護者と話し合うことで比較的うまく対処していたが、看護者と感情を共有することを積極的にしない看護者は、ストレスフルで患者にも頻回に怒りを表すという行動を起こしていた。特にこのようなネガティブな感情の対処を行う看護者は20代〜30代の比較的若年者に見られ、彼らを焦点にしたピアサポートグループの必要性が現状の分析から明らかとなった。
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