研究課題
本研究では、光を利用した部位選択的な遺伝子導入を実現するナノキャリアを開発している。本年度は、カチオン性ペプチドとDNAからなるポリプレックスの表面にアニオン性のデンドリマー型フタロシアニン(DPc)を作用させることにより、表面がDPcで覆われた光応答型人工ウイルス(三元系コンプレックス)を開発し、その機能評価を行った。その結果、細胞外pH環境下(pH7.4)では、DPcは三元系コンプレックスの構成要素としてDNAと一体化されており同時に細胞に取り込まれるが、エンドソーム内低pH環境下(pH5.5)では、DPcは三元系コンプレックスより解離し、エンドソーム膜に選択的に相互作用することが示唆された。この結果、三元系コンプレックスは、光照射下でエンドソーム膜選択的に光障害を与え、DNA/ペプチド複合体が効率的に細胞質内に輸送されることが期待できる。実際に、三元系コンプレックスは、培養ガン細胞に対して、細胞毒性を惹起することなく、100倍以上の光選択的遺伝子導入を達成することが明らかとなった。この結果は、DNA/ペプチド複合体と低分子光増感剤(スルホン化フタロシアニン)を用いて同様な実験を行った時に、光照射による遺伝子発現効率の上昇に伴い、顕著な光毒性が惹起された結果と対象的であった。本年度は、さらに本システムのin vivoにおける有効性を確認するために、三元系コンプレックスをラットの結膜下に投与し、レーザー光照射を行ったところ、光照射部位にのみに遺伝子導入した蛍光タンパク質の発現が認められた。本成果は、動物実験で外部からの光による遺伝子導入部位の制御に成功した世界で初めての例である。現在は、この成果を全身投与による光選択的遺伝子導入に応用するために、表面が生体適合性のポリエチレングリコール層で覆われた新しい高分子ミセル型の光応答性ナノデバイスを開発している。
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