ラット後球海綿体筋(LAM)は、アンドロゲンに対し極めて感受性の強い骨格筋である。即ち、去勢することによりLAMは、著しい萎縮を誘発し、テストステロンを投与することにより再肥大を引き起こすことが示されている。本研究では、去勢後のラットLAMにおけるapoptosis及びandrogen receptor、筋分化誘導因子の関係について免疫組織化学的手法及び組織化学的手法を用い検討した。材料にはwistar系雄性ラットを用い深麻酔下にて、両側の精巣を摘出した。その後7日、14日、30日、60日間の通常飼育後麻酔下で、胸部大動脈より4%paraformaldehyde溶液にて灌流固定を行った。固定後迅速にLAMを摘出し、急速凍結の後凍結切片を作製し、DNAの断片化をTUNEL法にて検出し、ubiquitin (Ub)及びUb activating emzyme (E1)の発現について免疫組織化学的手法にて検出した。また去勢後におけるandrogen receptor (AR)の発現及びMyoD及びmyogeninnの発現につて検出し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。去勢後のLAMでは、7日後の筋では著名な萎縮を観察することはできなかったが、14日以降の筋では著しい骨格筋の萎縮が観察された。これらの試料に対しDNAの断片化を検出したところ、去勢後7日、14日後の筋ではTUNEL陽性反応を示す筋核が認められたが、30日、60日の筋では殆ど認められなかった。Apoptosis関連蛋白であるubの発現は、去勢後のLAMの筋核にその発現が認められたが、14日以降の筋において特に顕著なものであった。またE1の発現についても同様の傾向を示した。一方ARの発現は去勢後著しく低下し、MyoD及びmyogeninの免疫反応では、去勢7日、14日後のLAMにおいて陽性反応が認められた。これらの結果から去勢後ARの発現が減少することによりLAMの萎縮が誘発されると共に血中アンドロゲン濃度の低下によりapoptosisが誘発され、その後、活性化したUbにより変性蛋白が分解されたものと推察された。また萎縮を誘発している骨格筋の機能及び形態を保持するため筋分化誘導因子の発現が認められたものと考えられる。
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