研究課題
フラーレンC70はC60よりも大きな内部空間をもつために、2個の小分子の内包が可能であると期待されている。そこで本研究では水素分子を内包したC70の合成を行った。すなわち、C70とピリダジン誘導体との熱反応により、8員環開口部をもつ誘導体を合成し、光化学的な酸化反応により開口部を12員環へと拡大し、さらに硫黄原子を開口部に挿入することによって13員環の開口部をもつC70誘導体を合成した。この誘導体の構造はX線結晶構造解析により決定され、開口部の大きさが先に報告した開口C60誘導体のものとほぼ同程度であることが確認された。また、理論計算により水素分子の挿入に必要なエネルギーを見積もり、開口部の大きさを評価した。次に13員環開口体に高圧の水素ガスを作用させたところ、水素分子1個が内包されたもの(収率97%)に加えて、2個の水素分子が内包されたもの(収率3%)が生成していることが、NMR測定により明らかとなった。内包された水素分子は可逆的に取り出すことも可能である。一方、2個内包体の温度可変NMR測定を行ったところ、内包された2個の水素分子は室温では互いの位置の交換が速いものの、低温ではその速度が減少し、NMRの時間尺度で止まることが明らかとなった。最後に水素分子を内包したままでの開口部の修復を4段階の有機化学反応により行った。その結果、水素分子1個を内包したC70、ならびに2個の水素分子を内包したC70をそれぞれ単離することに成功した。H2@C70のNMR, IR測定の結果、内包水素分子と外側のC70骨格の間には弱い相互作用があることが明らかとなった。
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