細胞を培養するためのマイクロチップを設計し、作製した。チップはフォトレジストSU-8を鋳型に用いたソフトリソグラフィー法によりPDMSを基材として作製した。また、作製したチップを用いた場合の最適な培養方法についても検討を行った。その結果、数種類の細胞について至適な培養条件範囲を明らかにすることができた。 また、より精密に生育状態を制御することを目的に、細胞が接着するチップの内表面に数百nmオーダーのストライプ状構造体を作製し、その表面での生育状態についても検討した。ナノ構造体については、ガラス基板に金属パターンを作製してその上に自己組織化膜を構築し、そこに細胞外マトリックスをパターニング化する方法と、ガラス基板に電子線リソグラフィー法とドライエッチング法を組み合わせて凹凸を構築したナノ構造体をPDMSに写し取って、この表面で細胞を培養する方法の2種類を検討し、どちらにおいても細胞が通常の平滑な表面での培養とは異なった生育状態をとる可能性があることを見いだした。とくに凹凸構造上で胃がん細胞を培養した場合、細胞の形状だけではなく細胞の運動性にも大きな差違が生じ、細胞がストライプの方向に激しく移動する現象を見いだした。 バイオアッセイ系の構築としては、腸管吸収の検定デバイスを作製した。マイクロチップ内部にメンブレンフィルターを挟み込み、その膜の上下に流路を作製した。膜上に腸上皮細胞のモデル細胞であるCaco-2細胞を培養し、上側の流路に添加した薬剤が下側に透過する量を求めることにより、薬剤の腸管透過性をアッセイすることに成功した。
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