研究概要 |
1.プロテアソーム阻害剤の神経突起伸展実験 昨年度は、全合成を完成したプロテアソーム阻害剤TMC-95AがPC12細胞に対して神経突起伸展活性を持つこと明らかにし、TMC-95Aが低分子神経栄養因子となる可能性を世界で初めて示した。本年度は、様々なプロテアソーム阻害剤(ZLLLLal,ラクタシスチン,グリオトキシン,フェプロペプチンD,エピギャロカテキン,アクラシノマイシンA)を用いて同様な実験を行った。その結果、ZLLLalとラクタシスチンにのみ、神経突起伸展活性があることが明らかになり、グリオトキシンは細胞毒性を示すことがわかった。本成果により、阻害能だけではなくプロテアソームに対する結合様式が突起伸展活性に重要であることを初めて示した。 2.メリラクトンAの不斉全合成と絶対配置確認 本年度は、神経突起伸展作用を有する(-)-メリラクトンAの不斉全合成を完成させた。光学的に純粋な原料から[2+2]光環化反応を経て、連続する四級炭素構築した後、8員環ジケトンを合成した。本8員環ジケトンは、メソ対称部分構造をもつが、保護基によってその対称性が失われキラル化合物となっている。ジケトンの分子内アルドール反応は、生じる四異性体のうち望む異性体を選択的かつ高収率に与えた。本反応は、合成上必要な保護基の立体環境の差異により、生じる二つの不斉点の立体化学を同時制御する、まったく新しい反応である。さらに得られたコア炭素骨格から、9位四級炭素の構築などの鍵反応を経て、(-)-メリラクトンAの不斉全合成に成功し、その絶対配置を初めて確認した。
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