本年度は、前年度に導入した赤外線画像処理装置を活用し、全国各地の遺跡から出土した漆紙文書・木簡の調査を行った。特に今年度は、東北地方の城柵官衙遺跡を重点的に調査した。具体的には、宮城県多賀城市多賀城跡(計帳用文書など)、宮城県多賀城市山王遺跡(出挙帳様文書・国符案・古文孝経など)、岩手県水沢市胆沢城跡(古文孝経など)、秋田県秋田市秋田城跡(出挙帳様文書、死亡人帳、計帳様文書・具注暦・書状など)の調査を行った。この他、関東地方の官衙・官衙関連遺跡として、栃木県栃木市下野国府跡(田籍様文書など)、栃木県小川町上宿遺跡(調度品関係文書)、茨城県石岡市鹿の子C遺跡(検田帳様文書、出挙帳など)、西日本の官衙遺跡として、兵庫県豊岡市祢布ケ森遺跡(歴名様文書)の調査を行った。 以上の調査結果と比較検討すべく、前年度に調査した、都城遺跡であるところの奈良県奈良市平城宮・京跡、京都府向日市・京都市の長岡宮・京跡出土の漆紙文書の再調査を行った。 これらの調査にさいしては、資料の赤外線画像のほか、可視光線画像を撮影し、また、釈文、形態等について検討を行った。 以上の調査を踏まえ、都城遺跡出土資料と、地方官衙遺跡出土資料につき、その内容、形態、廃棄に至るまでの来歴、背景としての漆工房の存在形態などについて比較検討を行った。 これらの研究成果の一端は、2006年2月7日から3月7日にかけて、奈良文化財研究所飛鳥資料館で開催された企画展「うずもれた古文書-みやこの漆紙文書の世界-」にて公開した。
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