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2006 年度 実績報告書

ヒトを含めた霊長類における他者の行為の認識とその発達に関する比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 16683003
研究機関滋賀県立大学

研究代表者

明和 政子  滋賀県立大学, 人間文化学部, 講師 (00372839)

キーワード模倣 / チンパンジー / 自己意識・他者意識 / 認知発達 / コミュニケーション / フサオマキザル / 身体探索 / 胎児
研究概要

ヒトは、生後1年半から2年ごろに、鏡に映る自分の姿を「自分である」と認識するようになる。この結果は、ヒトが、自己を他者と区別して認識する能力が獲得された有力な証拠として位置づけられている。しかし、通常の鏡映像を理解できるはずの3歳児でも、2秒の遅延をはさんだ自己映像を見せると、それを自分であると認識することは困難となる(宮崎,2003)。つまり、自己映像を理解には、時間的随伴性という要因が大きく影響すると考えられる。
鏡映像を理解できるのは、ヒトだけではない。チンパンジーをはじめとするヒト以外の大型類人猿も鏡に映った自分の像を、「自分である」と認識することができる。しかし、その他の霊長類については、そうした証拠は得られていない。
本研究では、チンパンジー(Pan troglodytes)、フサオマキザル(Cebus apella)、ヒト乳児(Homo sapiens)を対象として、自己像を理解する能力の進化史的・発達的起源を探ること、その際、この能力の獲得を時間要因との関連において調べることを目的とした。
実験条件として、(1)0.5、(2)1.0、(3)2.0秒遅延させた自己映像を、それぞれの個体に2分間、呈示した。各条件での像呈示の前後には、ベースラインとして通常の像をそれぞれ2分間呈示した。その結果、1)チンパンジーの成体は、身体の動きと自己映像が時間的に随伴しない状況でも、経験を積めば自己像であると認知する、2)フサオマキザルの成体は、モニターから遠ざかる、威嚇など激しい攻撃を加える、身体を頻繁にかきむしるなど、通常の鏡映像の場合よりも強い社会的反応を示す、3)ヒト乳児も通常の鏡映像と遅延する自己像を区別できており、遅延する自己像に微笑む、声をあげるなどより強い興味を示すこと、が明らかとなった。
以上より、自己と他者の弁別能力の発達と進化においては、自己受容感覚-視覚間の時間的な同期性(随伴性)の認知が重要な要因であることが示唆された。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2007 2006 その他

すべて 雑誌論文 (3件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] こころの誕生と進化-ヒトらしさの起源を探る2007

    • 著者名/発表者名
      明和政子
    • 雑誌名

      生物の科学 遺伝 20

      ページ: 232-236

  • [雑誌論文] Do human fetuses anticipate self-directed actions? A study by four-dimensional (4D) ultrasonography2006

    • 著者名/発表者名
      Myowa-Yamakoshi, M., Takeshita, H.
    • 雑誌名

      Infancy 10(3)

      ページ: 289-301

  • [雑誌論文] チンパンジーにみる遊びと学びの進化史的基盤2006

    • 著者名/発表者名
      明和政子
    • 雑誌名

      BRAIN MEDICAL 18

      ページ: 259-264

  • [図書] 心が芽ばえるとき消-コミュニケーションの誕生と進化2006

    • 著者名/発表者名
      明和政子
    • 総ページ数
      269
    • 出版者
      NTT出版
  • [図書] 認知心理学への招待22006

    • 著者名/発表者名
      明和政子
    • 出版者
      研究社
  • [図書] Comparative cognition : Experimental explorations of animal intelligence2006

    • 著者名/発表者名
      Tomonaga, M., Myowa-Yamakoshi, M., Mizuno, Y., Okamoto, S., Yamaguchi, M.K., Kosugi, D., Bard, K.A., Tanaka, M., Matsuzawa, T.
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      Oxford University Press
  • [図書] Diversity of Cognition : Evolution, Development, Domestication, and Pathology2006

    • 著者名/発表者名
      Tomonaga, M., Myowa-Yamakoshi, M., Okamoto, S., Bard, K.A.
    • 総ページ数
      17
    • 出版者
      Kyoto University Press
  • [図書] Handbook of Developmental Social Neuroscience

    • 著者名/発表者名
      Myowa-Yamakoshi, M., Tomonaga, M.
    • 出版者
      Guilford Press(in press)

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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