研究概要 |
低スピン系(S=1)で初めて、低温まで正確に3角格子の対称性を保つ、擬2次元系NiGa2S4を発見した。まず、高純度多結晶の育成法を確立した。この多結晶体を用いた磁気・熱測定により、80Kの磁気相間を持つにもかかわらず、0.35Kまで磁気秩序が抑えられたこと、また、10K以下で非従来型のスピン状態が実現していることを見出した。また、中性子実験により、スピンの持つ短距離相間の構造を明らかにした。比熱は低温で温度2乗則を示し、低温でのコヒーレンス長は200nmものマクロな距離になり、新しい量子臨界的状態を形成している可能性がある。 局在スピンを持つパイロクロア型酸化物磁性体は、数多く知られているが、これまで報告されていたものすべてが比較的高い温度で磁気転移を示す。特に金属でありながら局在スピンが低温まで秩序を示さないというものは皆無であった。我々は、Pr2Ir2O7がその初めての例であり、低温で量子臨界的スピン液体的に振る舞うことを、最近育成に成功した単結晶での研究により見出した。さらに、RKKY相互作用による磁気秩序が幾何学的フラストレーションにより押さえられたことで、酸化物で初めての近藤効果が見られた。 Ca2-xSrxRuO4は軌道の秩序により、様々な基底状態をとる多重バンド型モット転移系である。モット転移近傍の重い電子状態での量子メタ磁性転移近傍での電子構造の変化を、電気抵抗・ホール係数の精密測定からプローブし、角度依存型磁気抵抗効果等の興味深い量子伝導現象を見出した。重い電子フェルミ液体のフェルミ面の形状を反映したc軸方向の磁気抵抗の面内方位依存性が、低磁場の2回対称から擬4回対称へと変化する。一次元的バンド(dyz,zx)が支配的な反強磁性状態から2次元的なバンド(dxy)による強磁性に、数テスラの磁場によりスイッチングが起こったと考えられる。
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