研究概要 |
1.研究試料の採取および非破壊計測 白鳳丸によるKH04-2次航海(6-7月)に参加し,九州-パラオ海嶺から南北トランセクトをなす配置で新たに4本の海洋コアを採取することに成功した.採取したコアは,高知大学に持ち帰り,研究室にてX線CTスキャナやマルチセンサーコアロガーを用いた非破壊物理計測を実施した後,個別分析用のサンプリングを行った. 2.コアの年代モデル推定 新たに採取したコアの堆積年代を推定するために,有孔虫化石の酸素同位体比測定,および,火山ガラスの屈折率測定を行った.現時点で,2本のコアの同位体比測定が済んでいるが,日本列島に近いKPR1PCのコア最下部は約3万年前まで達していることが明らかとなった.堆積速度は約20cm/千年と見積もられることから,最終氷期以降の古海洋変動を高い時間分解能で復元することが可能である,また,北緯28度のKPR3PCでは過去10万年間の解析が可能であると推測される. 3.既存コアの有機地球化学分析 トカラ海峡東部および四国沖から採取済みであったコア試料の地球化学的分析を行った.バルク有機物の炭素・窒素同位体比を測定した結果,四国沖では最終氷期から完新世への移行期に窒素同位体比が大きく変化することがわかった.これは黒潮流路の変化に伴って海水中の栄養塩濃度および組成が変化したことを反映していると推測される.また,アルケノン古水温計から復元される表層水温は,最終氷期に約4度低下しており,1万7千年前に急激に温暖化していることがわかった.これらの有機地球化学的データを基に,過去の黒潮流路の変遷史を詳細に復元することが可能であろう.
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