研究概要 |
平成16年度の成果に基づき,ともに同心円状に3分割されたイオン源及び電子源を具備した,磁力線平行方向フロー速度シアに垂直方向フロー速度シアを制御しながら重畳することが可能な新しいプラズマ源を用いて,これらの速度シアに起因するドリフト波不安定性の特性を詳細に調べた. 1.平行フロー速度シアにより励起されたドリフト波不安定性が,垂直フロー速度シアを制御しながら重畳することにより次第に抑制されるが,その抑制機構が垂直シアの符号により異なることが明らかとなった.また,垂直シア重畳の際に不安定揺動の周波数スペクトルが広帯域化する現象が観測されており,乱流遷移との関連を含めて理論的な解析を進めている. 2.レーザー誘起蛍光法によるフロー速度シア計測を,前年度に引き続きKoepke教授研究室(ウェストバージニア大学・米国)で行い,磁力線平行方向と垂直方向のイオン速度分布関数を二次元的に精密に測定した.また,それらのシアの不安定揺動に対する効果を調べた結果,平行シアにより高次の周方向モード数をもつドリフト波不安定性等が励起され,さらにモード数によって励起に必要なシア強度の閾値が異なることが明らかとなった. 3.ハイブリッドイオンを導入する実験として,現在のカリウム正イオンプラズマに対して,異極性の負イオンを形成する六フッ化硫黄を導入し,ドリフト波不安定性に対する効果を調べた.負イオン交換率(プラズマ中の電子と負イオンの置換率)の上昇に伴い,不安定性の揺動レベルが上昇することが確認された.さらにこのとき,ドリフト波不安定性が励起される平行シア強度範囲が正・負両方向に拡張する現象が観測された.これらの結果から,プラズマ中の負イオン導入が,シア駆動支配下のプラズマの不安定化を促進させることが明らかとなった. 4.負イオンプラズマ中でのドリフト波不安定性の周波数スペクトルを観測した結果,ある平行シア強度範囲において鋭利なスペクトルから広帯域なスペクトルへと遷移し,さらなるシア強度の上昇により再び鋭利なスペクトルへと遷移する様子を観測した.この現象は,負イオン及び平行シアが共存するときにのみ観測され,一般的に揺動レベルの強い場合に発生した.従って,このスペクトルのブロード化は「負イオン」及び「平行シア」の2つの事象に起因する非線形効果の発現により,元は正弦波的であった線形領域の波動が,乱流的なスペクトル特性を呈するようになったと考えることができる.
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