新たにキラルならせんホストポリマーとしてアミロースを選択し、オリゴシランとの包接錯体形成を行った。アミロースは非環状の一次状高分子であり、左巻きのらせんコンポメーションをとることが知られている。実際にナミロースがオリゴシランと包接錯体は水中で超音波照射後、撹拌することによって形成すること、またその構造は各種NMRによって確認した。得られた超分子錯体の吸収および円二色性(CD)スペクトルによる解析から、アミロースのらせん空孔内でオリゴシラン鎖が一方向のらせん構造を誘起することを見出した。 アミロースが左巻きのらせん構造をとるのに対し、シズフィランは右巻きらせん構造をとる。このようなシゾフィランをキラルならせんホストポリマーとしてオリゴシランとの錯体化を行った。この場合も水中でオリゴシランとシゾフィランとの撹拌することで錯体形成が確認された。吸収およびCDスペクトルによる解析を行ったところ、誘起コットン効果が観測されオリゴシランのらせん構造誘起が確認された。また観測された誘起コットン効果は先のアミロース錯体の場合とその符号が逆転し、オリゴシランは逆向きのらせん構造が誘起されていることが分かった。すなわち、キラルならせんホストポリマーのらせん方向によって誘起されるオリゴシランのらせん方向が制御されていることが明らかとなった。 今回明らかとなった現象の一般性について、ゲスト分子としてパイ共役系分子のオリゴチオフェンを用いて、アミロースあるいはシゾフィランとの超分子錯体形成について検討を行った。この場合も、錯体が形成しうること、また吸収および円二色性(CD)スペクトルによる解析から、アミロースあるいはシゾフィランとのらせん空孔内でオリゴチオフェン鎖が一方向のねじれ構造を誘起すること、さらにその誘起されるねじれ構造の向きはアミロースおよびシゾフィランで全く逆であることが明らかとなった。
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